修辞と幻想・音楽のことば・ホープパンク・超SF…

『ユリイカ』11月号・12月号への寄稿、オペラ作品レビューの紹介、コンテクストのキュレーションについてなど、渋滞してきたお知らせをまとめてお伝えするお手紙です。
かわのさきこ 2025.11.21
読者限定

X(Twitter)の短文では説明しづらいこともさまざまにあるのだということに遅まきながらふと気づいたので、紙幅に制約のないお手紙のかたちでお知らせを書こうと思います。

それぞれどのような経緯で、なにを考えながら書いたのか、思い起こしながら記していると、やはりというべきかお知らせにしては長めの文章になります。

そこでこちらのお手紙では、執筆・掲載関連のお知らせだけをまとめてみることにします。

・ユリイカ2025年12月号 特集=宮崎夏次系
・ユリイカ2025年11月号 特集=原口沙輔
・『船はついに安らぎぬ』レビュー掲載/『Kaguya Planet』vol.7 ホープパンク特集
・ゲンロン『超SF創作マニュアル』巻末付録調査執筆協力

近々開催される文学フリマ41関連のお知らせは、次のお手紙にまとめようと思います。

ユリイカ2025年12月号 特集=宮崎夏次系

論考「〈すごくふしぎ〉の詩学――宮崎夏次系の物語世界と修辞のリテラル化」

主体としてのモノが繰り広げる〈すごくふしぎ〉の世界、かつてレトリックであった何かが新たに息づく物語の倫理のことを書きました——つまり、石ころのような無機物がなぜ物語世界に文字通り息づき、楽しげにあれこれしゃべることができるのか。主に扱っている作品は『SFマガジン』に連載されていた『と、ある日のすごくふしぎ』です。本作を扱うことが依頼時のリクエストで、わたしが書いて良いのかしらとびっくりしながら書きました。

宮崎夏次系論でありながら、同時にわたしにおいてはかなり直球の「幻想」論でもあり、ふだんから考えているリアリズム/幻想/レトリックのあいだの関係を、とても魅力的な世界のもとで改めて整理することができた充実の執筆時間でした。いつかこうした話を、論と実作の双方の系譜的な側面からも探り、まとめることができるといいな——

本特集はSF関係の若手女性作家陣が数多く寄稿されているということもあり、手にするのがとても楽しみです!

[11月27日発売予定]

ユリイカ2025年11月号 特集=原口沙輔

論考「綴り換わるもの――原口沙輔の言語遊戯と言葉のかたちについて」

音楽とともにあるとき言葉はどんなかたちに歪むのか、その引き攣れがあなたをどこへ連れてゆくのかを、原口沙輔の作品にみられる言語遊戯に触れながらさぐっていくという論です。作詞も担っている作曲家でありながら、かれの書く詞には言葉にたいする愛憎が渦巻いているようにも感じられ、その感覚はとてもよくわかりつつ、そうはいってもそれでよいのか、という逡巡のもとで書きました。

過去2年ほど取り組んでいるオペラ制作では言葉と音楽の関係をさまざまに考えていたので、そういった実作の経験と相互作用のある論になったような気がします。言葉と音楽が同時にあるものをひとが聞くとき、そのどちらが前景化するかはかなり聞く人のバックグラウンドによるのだと思われ、それがつねに難しいところです。わたしは基本的には、音楽と詞の双方がマキシマムな質を持って鍔迫り合いする作品が結局はいちばん面白いと思う。

論には直接あらわれていませんが、執筆の過程で坂本龍一のテクストにたくさん触れられたのもよかったです。

『船はついに安らぎぬ』レビュー掲載

『Kaguya Planet』vol.7 に、オペラ『船はついに安らぎぬ』レビューを堀川夢さんにより執筆いただきました! 人間の世界の論理のことなどまったく意に介さない酷薄な水妖たちのことを堀川さんは偏愛している(と思う)ので、きっとぴったりに違いないと確信し、思い切って公演にお誘いしご覧いただいたというのが最初の経緯でした。

オペラ『船はついに安らぎぬ』(永井みなみ作曲、河野咲子脚本)は、2025年6月に成城ホールにて初演された幻想怪奇オペラです。堀川さんのレビューは非常に克明に作品を記述し、そしてさまざまな試みを掬い取ってくださっています。上演芸術はアーカイブが困難なので、このようにテクストによる詳細な評があることはとても心強いことであると感じます。

レビューは特集外の記事ですが、本号の特集は「ホープパンク」、希望と抵抗にかかわるSFのサブジャンルの紹介です。必見の特集、ぜひご入手ください。

[11月25日発売予定]

『船はついに安らぎぬ』レビューは、2025年7月刊行の『トーキングヘッズ叢書』No.103にも掲載されています。こちらは三五千波さんによるイラストレビューで、テクストとはまた異なり漫画の形式の見応えのある評です。

『超SF創作マニュアル』巻末付録調査執筆協力

『超SF創作マニュアル』はその名の通り、SFの創作にかかわる知識と、それ以外のあれこれがさまざまに詰め込まれた一冊です。SF書評家・アンソロジストの大森望さん監修、SF編集者の小浜徹也さん・井手聡司さん執筆。そのような書籍にわたしが関わっているのは、ゲンロンSF創作講座でチューターの仕事を担当しているからです。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、291文字あります。

すでに登録された方はこちら